カレーのルーは左側

 

 

カレーは様々なシチュエーションで美味しく食べられるから大好き。どこで食べても美味しい。

 

雀荘で出前を取って食べるカレーは、ぐちゃぐちゃに混ぜて食べると美味しい。安っぽさの中に、ギャンブルしてる瞬間が見出せる。負けてたら、普段より多く荒くかき混ぜてしまうのも一興。

 

茶店で食べる挽き肉の入ったカレーも美味しい。喫茶店の色味とカレーの色味がすごく合う。「カレーの時間」をすごく感じさせられる。おまけに最後にコーヒーまで出てくる。僕はブラックコーヒーが残念ながら飲めないけれど、ミルクを入れたまろやかな色が、穏やかに終わりを伝えてくれる。そこにアメリカンスピリットの黄色を添えるのがいつものスタイル。

 

食堂で友人と食べるカレーも美味しい。食堂のカレーには外れがほとんどない。四季の色合いを見ながら、変わらない味を食べるのが良い。テンプレートの人生を歩んでいる存在だと強く思わされて、それでいてこういった生き方が出来る人はそこまでいないんじゃないかと後から思える。その時に思い出すのはなんてことないカレーの味だったような気がする。

 

セックスした女の子が帰った夕方、まだ匂いの残る中で作るカレーも美味しい。具材が炒められ、煮込まれ、ルーを入れると、それまでのまどろみと、微かに身体に残った熱が姿をなくしていく。換気扇が湿っぽいセックスの後の匂いとカレーの匂いを吸い込む。1人でカレーと向き合うと、少しずつ自分が元の形を取り戻していき、ホッとする。

 

家族で食べるカレーも美味しい。リビングの扉を開けた瞬間に夕飯がカレーだと気づく。自分が作っていない料理にはまた違った美味しさがある。リビングに染み渡るような深い香りを残すカレーが、家族団欒の濃度を濃くさせる。

 

 

1人でカレーを作った。お肉を入れ損ねた。作ったら、その香りだけで満足して初日は食べられなかった。2日目に食べた。美味しかった。