曇り空が広がるフードコート

 

 

たいていの田舎は、女子高生を縛りつける。遊びたい盛りの精神と、今か今かと弾けるのを待つやくのような身体を持ってしても、決して外の世界を純な目では見られない。そして小汚いゲームセンターのイカ臭いプリクラを撮り続けるのだ。可哀想に。

 

 

その日々から生じるシミは取れない。だから年をとると田舎の女は貧乏臭くなる。僕の経験から言うと、そういう女の写真はくすんでるからすぐに分かる。見る人によってはそう見える。葉蔵みたいな感じ。分からない人はいつまで経っても分からないから諦めるべきだ。

 

 

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人から好意を向けられたことに対して、その好意を敏感に察知し、その上で泳がせたり、猫のように飛びついたりすることは簡単に出来る。だけど、人の悪意に関してはなかなかうまく気付くことができない。鈍感なんじゃない。温室だったという方がピタリと当てはまる。

 

 

加えて好意をもって接する行動を喜びもしないのにされた挙句、心を弄ばれた。と考える人間が割に多い。「全人類主人公理論」を掲げるような人間がそうなりやすいように思える。それがすごく嫌いで、だからなのか僕は悪意を向けられやすい。

「弄ぶ」は興味深い言葉だ。弄ぶなんて言葉は弄ばれた側しか使わない負け犬のセリフだよ。負け雌犬だよ。

 

 

僕は自分にめちゃくちゃ都合の良い考え方なので(決して主人公などとは思わないが)、弄んでいるのではなく、互いの最良の選択のヒントを与えていると考えている。加えて温室で伸び伸びと毒気に触れずに育ってきたから、そういったハートは好意を前にした時により汚れやすく、目立ちやすい。都会と田舎の空気が違うように。

そのため僕が人の好意や悪意を察知した瞬間、水の入ったコップに墨汁を入れるような、淡く緩やかに、しかし確実に汚れが広がっていく。「黒」と言う漢字が煤が詰まった様子を表すと知り、決して他人事とは思えなかった。

 

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深みのある女はペガサスだ。実在しない。

 

それでも僕はヘテロセクシュアルだし、自認できる部分のセクシュアリティを見ても、圧倒的多数派だろうと思う。面倒くさがりだからセックスはそんなに好きじゃないけど、ヘテロロマンティックは、少し怖いなと感じる。そんなこと僕の周りが言ってたら、普通に笑いながら「カッコつけてんじゃないよ」って言ってしまう。

 

どちらかというと男が基本的に得意じゃない。

知ってる生き物だから、もういいかな、ってなる。ある程度知った結果それほど興味を引かれる存在じゃなかったから、深追いしない。

 

それならまだ、ラベルも剥がされた空のペットボトルみたいな女の方がいい。捨てられることを分かった上で人付き合いをすることを知ってるところだけは貧乏臭い女の良いところかもしれないな。

 

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